参考にしたい!
古民家・空き家再生の店&宿 @ 信州・小諸佐久周辺
古い建物の魅力を活かしたゲストハウス
今、普通の民家や蔵などを使った宿泊施設の利用が広がってきています。
そのなかで、古民家やレトロな建物をリノベーションした雰囲気のある宿が人気となっています。政府も外国人の観光客を呼び込むために、各地方の歴史ある建物を宿として再利用することを進めており、規制緩和や補助金などでテコ入れをしています。
空き家、空き部屋を活かしたゲストハウス
空き家、空き部屋をゲストハウスに活用するには、3つのやり方が考えられます。
A.自宅の空き部屋を活用して、旅人を泊める
B.広めの空き家に、管理人がいて(または管理人が近所にいて)、旅人を泊める
C.小さな建物を1棟貸し(1組限定)の宿にして、鍵を渡して泊まってもらう。
A.Bならば、広さによって、1日に何組かの客を受け入れることができます。
B.Cのタイプで家主が遠方の場合は、地元の個人や組織に管理を委託する必要があります。(管理にかかわる仕事も届け出が必要です)
最近は、東御市の「おみやど」さんのように、夫婦でゲストハウスを営業する方が増えてきており、ゲストハウスにするために古民家やまちなかの町家やレトロな家を探している方も多いようです。
ゲストハウスを営業するためには保健所等の許認可を受ける必要があります。
空き家や空き部屋活用のゲストハウスの場合は、おおむね「旅館業法の簡易宿所」の許可をとるか、「住宅宿泊(民泊)」として認可を受けており、それぞれ要件が異なります。主な違いは、防災設備などの設置義務(簡易宿所は必須、民泊の場合は規模が小さければ必須ではない)、営業可能日数(簡易宿所は制限なし、民泊の場合は180日以内)などです。
また、営業形態による許認可の種類、建物の状況や立地などにより、クリアすべき条件が違ってきますので、それらをよく検討して物件を探したり、リノベーションを考える必要があります。
食事を出す場合はこれとは別に飲食業の許可が必要ですので、食事は外食か、自分でつくってもらうか、買ってきてもらうゲストハウスが多いようです。
東御の「おみやど」さんのように、「一緒に作って食べましょう」というスタイルも楽しそうです。
お客様をどうやって呼ぶのか どんな人が来るのか
空き家や空き部屋をゲストハウスにするとしたら、お客様をどうやって呼ぶのかが問題です。今回の取材で、ゲストハウスを経営している小諸、佐久の何人かに聞いたところ、みなさん以下のような世界的な予約サイトに登録してお客さんを呼んでいるということです。(もちろん、他にもいろいろと手段はありますが)
Airbnb(エアビーアンドビー/通称 エアビー) https://www.airbnb.jp
booking.com(ブッキングコム) https://booking.com
そして、小諸・佐久あたりでは、「軽井沢観光を目的に、周辺に安いゲストハウスを探して来る外国人のお客様がけっこう多い」とのことです。(もちろんその中でも、いい感じだと思うところ、評価の高いところを選んでいらっしゃるわけですが)
特に小諸の場合は、駅近くで城下町や城跡も楽しめる、高原リゾートが楽しめる、
となれば、ゲストハウスとしてのポテンシャルは必ずしも低くないと思われます。
なお、「英語ができないから外国人は無理」と思いがちですが、「今は翻訳ソフトがすごく発達しているので、メールでのやり取りはこまらない。いらっしゃった時は、翻訳ソフトを使ったり、ジェスチャーなどでなんとか意思疎通はできています」という方もいました。
まちの暮らしにふれる旅 まちの人と話す旅
外国人の中でも欧米の方は、ホテルのように囲われた空間ではなく、まちの中の普通の家に泊まり、宿の人と触れ合ったりまちでの暮らしを味わいたいという志向からゲストハウスを選ばれることも多いようです。欧米の方は歩くことも苦にならない、というかお好きらしく、小諸駅から1時間くらい歩いて布引観音にいくのも苦にはならない方も少なくないようです。
ゲストハウスで、まちの中の食堂や飲み屋、散歩道、そして周辺の見所などを案内してあげられるとよろこばれると思います。
宿泊+体験があれば、そこが目的地になります
ゲストハウスによっては、さまざまな魅力づくりを工夫して集客をしています。
みんなでご飯をつくったりお酒を飲んだりというふれあいを提供している宿、農業やスポーツやものづくりを体験できる宿もあります。
歴史的な価値や魅力のある古民家に泊まる、風景が美しい宿に泊まる、それも十分に旅の目的になりえます。
宿泊+農家体験、自然体験などは今後もさらにニーズを広めていくと思いますが、まちなかでの体験宿もこれから全国に増えていくと思います。
軽井沢の「信濃追分文化磁場 油や」は、シェア・アートギャラリーの2階をゲストハウスにしており、アート&デジデンス(滞在して作品をつくる)としての利用もできるようにしています。
佐久市臼田の「橘倉酒造 クラビトステイ」は、かつて酒づくりの杜氏さんが寝泊まりしていた杜氏部屋をステイとして改造し、1週間くらいのプログラムで蔵人として働く体験を提供する宿で、2020年の4月からオープン予定です。ここは、世界初の蔵人体験宿として全国の注目を集めている例です。
このような体験+宿泊型の魅力のある宿が増えることで、観光地としての町の魅力もふくらんでいくのではないかと思います。
ゲストハウスをきっかけに、移住してくる人もいます
体験やふれあいを大事にしている宿には、リピーターや長期滞在者となる方も多いようです。ゲストハウスで知り合いができ、リピーターになったり、長期滞在をして、その町への移住を実現する人もいます。佐久市中込の元旅館の施設を使った「柏屋旅館」は、ゲストハウスと一緒にシェアオフィス、シェアアトリエとしても部屋を貸しており、短期滞在、長期滞在、住まい、仕事場などの利用に対応できるようにして、人のつながりや文化の発信地となることを目指しています。
そのような人のつながりをつくる仕事がしたくて、ゲストハウスを運営したいと考えている若い方も増えています。
そんな意欲のある若者を町に呼び込んで、魅力あるゲストハウスをつくってもらうことは、とても有効なまちおこしの手段だと思います。
荻原礼子(まちづくりプランナー)2020.2.15
小諸佐久では、古民家ゲストハウスのリノベーション事例が少ないので、他地域の写真も入っています。
川越市「ちゃぶだい」(ゲストハウス&バー)
川越市「ちゃぶだい」/入口の土間でカフェ&バーも営業。
川越市「ちゃぶだい」 /庭の見える共有リビング。
キッチンコーナーもついている。
「奈良バックパッカーズハウス」/古い町家をゲストハウスにし、外国人旅行者に人気。
福井県坂井市三国町 蔵や小さめの町家をリノベーションし、一棟貸しのゲストハウスに。「詰所三國」
小諸駅5分の「アンワイナリー」1階はワイン醸造と飲食。
2階2部屋をゲストハウスに運用。
外国人の客も多い。
佐久市臼田「橘倉酒造クラビトステイ」では、日本酒づくりを合宿で体験できる。
東御市 「おみやど」
収穫した野菜で、みんなで夕食も作って食べる。