top of page
参考にしたい!
古民家・空き家再生の店&宿 @ 信州・小諸佐久周辺
壊されるはずだった蔵が、地産地消にこだわるイタリアンレストランに。昔の建具に商都の面影を残しつつ、モダンな雰囲気を実現しています。
オープン/2020年(令和2年) 建物の年代/築100年以上 不動産/買取
設計・施工/設計は岳設計(小諸市)、施工は大井住建(小諸市)に依頼。
参考にしたいところ/街道沿いの細長い敷地の奥の蔵3棟をデッキでつないでおり、表の1棟がイタリアンレストラン。白い漆喰壁と木で柱と梁の美しさを生かし、天然、モダンな雰囲気に仕上がっている。それにはオーナー夫妻のイメージが反映されているとのこと。重厚な蔵の扉、窓についた古い建具が、城下町の商家の蔵の格式を感じさせる決め手となっている。また、自然素材にこだわったしつらえが、ぬくもりを感じさせる。
市川貴廣、未苗さん夫妻は、それぞれ10年くらい軽井沢で料理人として働いたのち、小諸あたりのできれば古民家で店を開きたいと一念発起。でも40軒くらい物件を見て回っても見つからず、しかたなく更地物件を見に来たこの場所に、解体されるはずの商家が残っていて、その中の蔵を使って店にしようということになったそうです。
お二人の理想は、田舎のまちの地元の人に愛され、畑と直結したレストラン。店名の「Cittaslow(チッタスロー)」は、イタリア語で「ゆっくりな村」。ファーストフードに相対する地産地消運動のシンボル的な言葉だそうです。
だから建物も木と土など自然素材を長く使い継ぐ古民家にこだわりました。
しかし蔵ははじめはぼろぼろで、屋根を葺き替え、腐っていた柱の取り替え、すじかいを補強、床の張替え、壁の塗り直しなどなど、手間もお金もかかる修復を行い完成までに1年かかったそうです。施工にあたった大井住建さんのフェイスブックには、「二次製品などは使用せず、外壁や屋内の壁は左官工事による漆喰仕上げ、追い張りした床や腰壁は全て無垢板で仕上げました。その他の部位は、元々の素材を生かしてあります。建具に至っては欅の蔵戸をそのまま利用してありますので、懐古な空間に始終包まれて居られます。文化財として残す価値の有る建築物と実感しながら、工事を進められたことは貴重な経験であり、こうしたご縁にも感謝しています」とあります。
ピザ窯、ストーブの燃料は薪、太陽光発電、太陽熱真空管、雨水タンク等、自然エネルギーを利用しています。解体した表の商家から未苗さんがもらってきた古材にカンナをかけてもらい、棚やテーブルに使ってもらいました。床は裏返して貼り直し、部材に残された墨の字もそのまま残してもらったそうです。
照明やインテリアは二人でしつらえたということです。
「新築と同じくらいの値段はかかっています。でも、小諸にルーツを持つ父が思い切って資金援助をしてくれました。まだ二つ残る蔵も、いちおう修復は終わっており、奥はゲストハウスにもなるようにしましたが、父が来ては泊まっています」
二人の理想を、しっかりと店づくりに表現することができたようです。
通り沿いの商家は壊して奥の蔵を表に出し、店の前に駐車場をとるというプランです。本来はすべて更地になる予定だったので、蔵が素敵な店として残ったのはありがたいことだと思います。
bottom of page